あまい誘惑

シュトラールへ

 

「バルフレアに会わせてくれ」

バッシュの言葉にヴァン自身も動揺せずにはいられなかった。

ヴァンもバルフレアに会いたかったのかもしれない。

空賊に憧れ、バルフレアに出会い、そして、今、冒険の予感がしている。

彼が、ヴァンの今後のカギを握っているように思えるのだ。

ヴァンは、バッシュとともに、とにかく彼がいそうな心当たりをすべて探してみた。

 

バルフレア達は砂海亭にいた。

2階席の目立たぬところにフランとともに座っているのが見えていたが、 その側に血相を変えたミゲロが何やら

興奮してしゃべっているのが見える。

ヴァンは、嫌な予感がした。

そして、その予感は、あたった。

 

「・・・あいつが、勝手に誤解しただけだ」

「誤解だろうが、6回だろうが、パンネロがさらわれたのは、あんたの責任じゃないか!」

パンネロ、と言う言葉に敏感に反応したヴァンは ミゲロとバルフレアの間に割り込んできた。

「おい、パンネロがなんだよ」

いきなり現れたヴァンに、半ば驚愕して、ミゲロはヴァンに目を向けた。

「おお、ヴァン!無事だったか!パンネロがさらわれてな」

ミゲロはそう言って、ごろつきがパンネロとバルフレアが仲間だと誤解され、

命が惜しければビュエルバの魔石鉱に来い、とバルフレアに手紙をよこした、というのだ。

「バッガモナンよ、ナルビナにいた」

ミゲロの言葉に補足するように、動じることなく、フランが言った。

「さっさと助けにいけ!空賊ってのはそういうもんだろう!」

興奮してミゲロ。

当のバルフレアは

「男の手紙に呼ばれてか?」

と、気が乗らない様子だ。

「じゃあ、オレが行くよ!空賊なら飛空挺くらい持っているだろ。送ってくれたら、オレがパンネロを助ける」

思わずヴァンが言った。

「つきあうぞ。私もビュエルバに用がある」

ヴァンの後ろでバッシュが言った。 その頼もしい言葉に、ヴァンは後ろを振り返った。

バッシュは、あることが気になっていて、その情報についてをある人物から聞き出そうと企んでいた。

「公爵との直談判か」

バッシュの思惑をすぐに察したバルフレアが言った。

公爵。 それはビュエルバの公爵オンドールのことだった。

しかし、この時のヴァンにとっては、そんなことは関係なく、とにかくパンネロを助けにいければよかった。

バッシュがいれば、心強い。

「頼む!送ってくれたらあんたにやるよ」

ヴァンは夢中でそう言って、バルフレアに女神の魔石を差し出した。

「手間のかかる女神ね」

相変わらず、動じもせずにフラン。

バルフレアは、ヴァンの「本気」を感じ取り

「さっさと支度して来い。すぐ旅立つぞ」

ヴァンの瞳がみるみる輝いた。

 

ヴァンの目の前に、初めて見る飛空挺「シュトラール」があった。

バルフレアは自慢そうに目を細めて

「なかなかのもんだろう」

と言った。

「なぁ、スピードは?武器はついてる?イフリートより凄いのか?」

すっかり興奮して我を失うヴァンを、微笑ましく思いながらバルフレアは言葉を返した。

「教えてやってもいいが、自分で感じたいだろう?」

ヴァンは、大きくうなずいて、待ちきれない、というように走ってシュトラールに乗り込んだ。

 

天上のデッキが開き、シュトラールはゆっくりと水平に浮き上がった、。

エンジンが火をふき、轟音を立てて、空に舞い上がった。

空が、どんどん近くなった。

「パンネロ、待ってろよ」

ヴァンの心が、熱く高鳴った。