あまい誘惑

国王暗殺の真実

 

バッシュにはガブラスと言う双子の弟がいた。

彼らはともにランディス共和国という小さな国に生まれたが、

17歳の時にランディスはアルケイディスの侵攻にあった。

バッシュは敗色濃厚であった自国を捨て、その時にガブラスとは離ればなれになったと言う。

ガブラスにとっては兄の亡命の真意がわからなかった。

少なくとも、自分たちの家族を捨て、国を裏切った者にしか見えなかったのだ。

バッシュが国を去った後、ガブラスは病弱な母を養うために帝国に頭を下げなければならなかったこと、

結局は母を死なせてしまったこと、そういったことが、兄、バッシュへの恨みへと変わってしまったのだ。

ガブラスの生きる目的はいつしか兄への復讐になっていた。

アルケイディスのグラミス皇帝の3男、ヴェインはそんなガブラスに眼を付けて、

ダルマスカ国王ラミナス暗殺への陰謀劇に利用することを思いついたのだ。

 

そして、あの夜・・・・

 

ガブラスはバッシュに成り済まし、ラミナス国王を殺した。

レックスは、バッシュの国王暗殺の目撃者として仕立てられ、 バッシュはその陰謀に巻き込まれたのだ。

 

話を聞き終わったヴァンは「信じられるかよ」とつぶやいた。

バッシュは「私はいい、レックスを信じてやってくれ。彼は立派な若者だった。最後まで祖国を

守ろうとした。 ・・・・いや、弟を守りたかったんだろうな」と言い、

「あんたが決めるな!」

とヴァンは即答した。

先ほどから子供じみたことばかり言っているヴァンにしばし苛立っていたバルフレアは

「なら、お前が決めろ。楽になる方を選べばいい。・ ・・・どうせ、戻らない」

そう言って、なぜか寂しそうにヴァンに背を向けた。

 

地下道はいよいよ出口に近づいたようだ。 フランが外からのミストの流れに敏感になっていた。

 

さらに先に進むと、彼らの前にバッテリミミックの親玉、ミミッククイーンが立ちはばかった。

もはや、バッシュを疑ってなんかいられない。

今は彼と力を合わせてこの敵を倒さなければ、ここを脱出出来ないんだ。

ヴァンはバッシュとともにミミッククイーンに立ち向かっていった。

そしてミミッククイーンを倒したと同時に、地下道の出口はは恐ろしい音を立てて崩れはじめた。

ぐすぐすしてられない!

4人は急いで、地下道の外へ走った。

 

「ここ、どこだ」

ヴァンが言った。

「どうやら東ダルマスカ砂漠だ。干上がる前にラバナスタに戻るぞ、かまわんな?将軍」

「ああ、一刻も早く帰りたい。人々は私を恨んでいるだろうが、果たすべきつとめがある」

バルフレアの問いにバッシュは答えた。

果たすべきつとめ・・・・

ヴァンは、恨まれているのを覚悟でなお国を守ろうとするそのバッシュの忠誠に耳を傾けずには

いられなかった。

バッシュは、本当に裏切り者なのだろうか・・・、と。

 

バッシュにとって、外の空気を吸うのは久しぶりだった。

「・・・・ダルマスカの風が、こんなにも懐かしいとはな」

そう言って深く息を吸うバッシュとともに、一行はラバナスタに向かった。

 

ラバナスタの南門で

「世話になったな」

とバッシュはヴァンと、そしてバルフレアとフランにそう言った。

「オレなら人ごみは避けるね。この街ではあんたはいまだに裏切り者だ」

バルフレアらしい遠回しな忠告をよそに、バッシュは人ごみの中に消えていった。

「縁があったらまた会おう。レックスの墓参りをしたい」

そう、ヴァンに言い残して。

ヴァンはその後ろ姿を見送り、心が揺れ動かずにはいられなかった。

そんなヴァンに向かってフランが言った。

「しばらくラバナスタにいるわ」

そしてバルフレアとフランもヴァンの前を去っていった。

 

「・・・・兄さん。バッシュを信じていいのかな」

ヴァンは、もう見えなくなったバッシュの去った先をいつまでも見つめていた。