あまい誘惑

ラバナスタにて

 

ラバナスタに戻ってきたヴァンは、まずは女神の魔石をパンネロに見せようと思った。

この時間なら、ミゲロさんの店で手伝いをしている頃だろう。

ヴァンは、ミゲロの道具屋に向かった。

店のドアを開けると、パンネロの姿はなかった。

代わりにカイツが人懐っこそうな笑顔を見せて、ヴァンに近づいてきた。

「ヴァン兄!ナルビナ送りじゃなかったの?」 カイツの言葉にヴァンは鼻高々になって答えた。

「オレぐらいになると、抜け出すのは簡単なんだよ・・・・・ところでさ、パンネロは?」

「今日は来てないよ。ミゲロさんもさっき慌てて出て行ったよ。僕もダラン爺から用事を頼まれ

てるんだけど、店番が忙しくて手が離せないんだ」

ふ~ん、みんな忙しいんだな、とヴァンはつぶやき

「じゃあ、カイツ、そのダラン爺の用事っての、オレが代わってあげようか?」

「え、いいの?」

思いがけないヴァンの言葉にカイツはビックリしたような声を出した。

「いいよ、オレ、どうせやることないからさ」

ヴァンはそう言って、カイツに別れを告げ、ダウンタウンのダラン爺の家に向かった。

 

 ダラン爺の地獄耳は有名だった。 彼はたくさんの情報をそこここから入手してきて、いろいろ

なヒントを持っていた。

ダランが今、懸念を持っていることはバッシュ将軍によるレックス殺害、そして国王暗殺につい

ての情報だった。

彼はそのふたつの情報について、まったく信頼していなかったのだ。

彼は、ラバナスタ解放軍が最近になってバッシュ将軍の生存情報を仕入れ、非常に混乱している

ことを知っていた。 バッシュの生存がわかった今、彼らに団結の意をうながそうと、日々、その

方法について思いめぐらせていたのだ。

そして、名案が浮かび、今日、そのおつかいの役をカイツに頼もうとしていた。

そんなダランのところに、ヴァンはひょっこりと姿を現した。

女神の魔石を盗み出し、ナルビナから脱獄してきたヴァンの成長ぶりにダランは半ば感心して、

ニコニコしてヴァンの栄誉を称えた。

「よし、ヴァンよ、お前を見込んで頼みがある。カイツに任せるつもりでおったが、お前の方が

ふさわしかろう・・・・いや、お前でなくてはならん」

ダランはそう言って何かを取り出してきて、ヴァンの目の前に差し出した。

「・・・こいつをな、アズラスという男に届けてくれんか」

そう言って差し出された剣を見て、ヴァンは興奮して答えた。

「これって、騎士団の剣じゃないか」

「うむ」

そう頷いてダランは剣を差し出した。

「よいか、かならず本人に直接渡すんじゃぞ。わしの名前を出せば取り次いでくれるはずじゃ」

ヴァンは、騎士団の剣を受け取り、ダランの言葉に小さくうなずいた。

「そうだ、パンネロがいないんだ。探しておいてくれるかな」

ヴァンの言葉にダランは微笑ましそうにうなずき、ヴァンを安心させた。